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朝山実が、読んだ本のことなど

『THE ABSENCE OF TWO』(青幻舎)の写真家・吉田亮人さんをインタビューしました

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先日、週刊朝日の「書いた人」という書評欄で取材させてもらった、写真家の吉田亮人さん。

記事では、孫と祖母の穏やかな暮らしを撮影した『THE ABSENCE OF TWO』(青幻舎)を出版するにいたった経緯を書きました。

インタビューの際にうかがった細かなことが面白く、載せられなかったことをnoteにupしています👇

──おばあちゃんの爪を切ってあげている、手のアップの写真がいいですね。

吉田さん(以下、略) 「爪きりのシークエンス(連続)のあとに、見開きで大きく見せているのは、アートディレクター(松本久木)のアイデアなんです。この爪切りのカット、じつはオリジナル版(2017年製作の私家本)には入れてなかった。
 アートディレクターから、これは作品を象徴する一枚だから、ぜったい入れるべきだと言われた。爪が伸びるというのは「生命」を表し、孫の大輝がばあちゃんの爪をパチンと切る。甲斐甲斐しく見える写真だけど、その後に起きることを知ると、じつは恐い写真でもある。すごい写真なんだと断言され、「おまえの想像力、すごいわ」って。そういう見方があるのなら、入れようとなったんです」
 

「大輝」は、吉田さんの10歳下の従弟にあたる。「ばあちゃん」は吉田さんの母方の祖母で、名前は「雪見」。親密なふたりの生活の様子が収められている。アートディレクターとは、本造りの過程で幾度も意見をたたかわせたが、尊敬を込め「作品のことをいちばんに考えるすごいヤツ」だという。

『THE ABSENCE OF TWO』には、近所の人や他の家族の姿がなく、室内や縁側にいるところを撮影したものが多い。しかし、ギャラリーでの展示を見ると、写真集には収録されていない、外出した先でのふたり以外の人の姿もある。

 

「撮った写真は、ぜんぶアートディレクターに見せ、その上で議論し「これは6畳の部屋と、縁側の写真だけで構成しよう」となった。荒木経惟さんがベランダの写真をよく撮っているでしょう。それと同じように、この作品は縁側がひとつの象徴だといわれた。
 たとえば、この見開きの写真(と写真集を開く)です。縁側に大輝がいて、家の中にばあちゃんがいる。見返してみたら、たしかに縁側の写真がけっこうあるんです。ふたりで座ってぼんやりとしているのとか」

──撮影中、それは意識されていなかった?

「してないです、もちろん。本を立ち上げるときになって気づいたことで、アートディクレターに言われて「縁側は彼岸と此岸的な隠れキーワード」として共有するようになった」

──この写真、大輝さんがすごくいい顔で笑っていますよね。ばあちゃんの視線は吉田さんの方にある。三人で何をしゃべっていたんですか。

「何しゃべっていたんでしょうね(笑)。三人でいても、たいしたことは話していないですから。ばあちゃんはいつも大輝に文句を言っていて。学校から帰るのが遅いとか。言いながら、嬉しそうにしているんですよね」



「ばあちゃん」の孫は吉田さん、大輝さんを含め6人。中でも、過ごした時間の多さから祖母にとっては吉田さんと大輝さんは特別な存在だったという。
 この日のインタビューは週刊朝日の「書いた人」という書評欄の仕事で、いつもどおり本の感想から入ったのだが、写真集をめくりながら、わたしの母親が高齢で自分を産み、小学校の参観日に教室の後ろに立っている母が浮いていて恥ずかしいと思ったことなど遠い昔の記憶を口にしていた。
 その間、吉田さんは「うん、うん」「ふんふん」と穏やかに耳を傾けている。聞き手と話し手が逆転していた。話し出すと止まらなかった。本来やっちゃいけないことなんだが。でも、吉田さんは、この写真集は、見たひとが自身の家族の話をとつぜん話しはじめるというのはよくあることだという。


「面白いなぁと思うのは、見る人のバックグラウンドで、いろんな見え方をするんだなという。いい意味でも悪い意味でも。なかには悪意のある見方をされることもありますし」

──悪意というと?

つづきは👇

他人なのに、なぜか自分の家族を追想する祖母と孫の写真集が話題の、吉田亮人さんに話を聞きました|朝山実|note

 

 

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東京・墨田区のRPSギャラリーにて。

 

 

 

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吉田さんのことを知ったのは、ここぞというときに撮影を依頼されているという杉本恭子さんの記事を見て、いつか写真を見てみたいと思ったのがきっかけでした👇

 

greenz.jp

 

週刊朝日の記事はコチラで見られます👇

dot.asahi.com

お寺で催された、「没イチ」おじさんたちのファッションショーを見てきました

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出番を待つ「没イチメンズ」

 

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お寺の地下ホールで催された「没イチ」ファッションショー

 

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楽屋裏。控室にて、人生初メイクを受ける。

 

「日刊SPA!」に先日東京都港区のお寺のホールで催された「"没イチ"メンズ」のファッションショーの楽屋裏を覗いたルポを書きました。

 企画したのは『没イチ』(講談社)を出された小谷みどりさん。週刊朝日の「書いた人」という記事の取材をした際、今度こんなことをするんですという話に食いつきました。

  バツイチという言葉があるなら「没イチ」って名乗ってもいいのでは。
ふざけたネーミングに聞こえるかもしれないけれど、伴侶に先立たれたかなしみは同じ体験をしたものでないと共有できない。軽い響きの造語の背景には、なんとか明るくなろうという意志がこもっている。とくに高齢者の場合はひきこりになりがちというのもある。

 自身も没イチという小谷さんは同じ体験者たちと「没イチ会」をつくり(単なる飲み会みたいなものだそうだが)、「今年はイメージチェンジ」をしたいというひとりの男性会員の発言が発端となり、ショーを企画することに。

 が、いろいなアパレルブランド、テレビで活躍するスタイリストに企画を持ち込むも軒並み断られたという。そこで小谷さん、逆に奮起してしまった。メンバーのひとたちには本の中で各人インタビューも受けてもらっているからと、お返しをしないといけないと『没イチ』の印税を全部ブチこむことに。なんかカッコイイ!!

 出演メンバーは男性6人。小谷さんいわく。女性が入っていないのは、女性の没イチはとくにそういう場をつくらずとも日ごろから着飾るにことは好き。お出かけもする。でも、男性は気にかけてくれる妻がいなくったらヒサンだから。

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ステージで孫娘たちからブーケをもらったというモデル男性

 

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本番ランウェイ

 

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ショー後、取材陣から記念撮影を受ける

 当日の出演者の没イチメンズの面々、なんか楽しそうでした。このな日もあったらいいよねと思った。

 

参考までに「週刊朝日」2016年12/7号👇

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週刊朝日「書いた人」『没イチ』小谷みどりさん

 

没イチ パートナーを亡くしてからの生き方

没イチ パートナーを亡くしてからの生き方

 

 

 

 

インタビューライター・朝山実 近著 『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社) 『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店) 『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP社)etc. 不定期連載 「日刊チェンマイ新聞」"朝山実の、という本の話" http://www.norththai.jp/