わにわに

朝山実が、読んだ本のことなど

部屋もの本③ 変な間取りのアパートと団地と下宿屋と

部屋もの本❸ 転居二年目になるがキッチンに立つたび疑問に思うのは、この部屋の換気扇のスイッチは何故、手の届くところにないのだろうか? 先代の住人はどうしていたのか? 賃貸マンションのこの部屋が不思議なのは、ガスレンジを置くスペースの奥にいろい…

ノワールはこうでなきゃな。

『嘘 Love Lies』村山由佳(新潮社)は、第六章がすごい。 「作家生活25年、新たな到達点となる哀切のノワール」とオビに謳った、村山由佳の長編小説。500頁超えだ。 25年かぁ、と購入。分厚いのは苦手なんだけど。1993年に『天使の卵 エンジェル…

ユニクロと選挙とコールセンター

「日刊チェンマイ新聞」の「これ、読んだ」という読書コラムで、最近読んだノンフィクションの収穫3冊「ユニクロと選挙とコールセンター」について書きました。 ❶『ユニクロ潜入一年』横田増生、http://www.norththai.jp/ex_html/ma/views.php?id_view=7 ❷『…

部屋もの本❷ 柴崎友香『千の扉』と谷口ジローの自伝的な短編と

部屋もの本その❷ 気づいたら“部屋もの”を好んで読んできた。「借りて住む」暮らしを描いた物語という意味だが、小説だと、『三の隣は五号室』長嶋有、『千の扉』『かわうそ堀怪談見習い』柴崎友香、『高架線』滝口悠生、『霧笛荘夜話』浅田次郎、あたり。 漫…

部屋もの本① 気づいたら"部屋もの"にはまっていました。

部屋もの本その❶ このところ「部屋もの」を好んで読んでいることに気づいた。 小説だと、『三の隣は五号室』長嶋有、『千の扉』『かわうそ堀怪談見習い』柴崎友香、『高架線』滝口悠生、『霧笛荘夜話』浅田次郎、あたり。 漫画だと、『椿荘101号室』ウラ…

2017のミステリーの収穫5冊

週刊文春12/14号がポストに入っていた。2017ミステリーベスト10が発表になっている。 わたしも国内部門だけアンケートに答えたけど、圏外の20位以内に三冊入っていたものの、10位以内には一冊もなく、何をナゾとして面白がるかの小説を愉しむポイントが違っ…

「ラモツォの亡命ノート」と「三里塚」と浜田真理子のハレルヤと

「ラモツォの亡命ノート」(小川真利枝監督)を観た。 ラモツォという、チベット出身の30代の女性と家族のドキュメンタリー映画だ。 チベットについて知っていることといえば、ダライ・ラマと中国が強く干渉しているくらいの大雑把なことぐらいで、何も知ら…

「おクジラさま」から考えてみる

『おクジラさま ふたつの正義の物語』佐々木芽生(集英社) 映画『ザ・コープ』で世界の注目を浴びた紀州南端の漁師町・太地町にニューヨーク在住の日本人女性ジャーナリストがカメラを持ち込んだ、ドキュメンタリー映画『おクジラさま』の舞台裏を綴ったノン…

『三里塚のイカロス』監督の代島治彦さんを「ウラカタ伝」でインタビュー

【お知らせ】 「ウラカタ伝」というブログで、『三里塚に生きる』につづき、『三里塚のイカロス』を撮られた監督の代島治彦さんをインタビューしました。「三里塚」は現在の成田空港の千葉で、1966年、国の一方的な政策決定に対して「農地死守」を掲げ、空港…

じゃんけんのシーンが秀逸‼ 映画「わたしたち」ユン・ガウン監督

『わたしたち The World of Us』ユン・ガウン監督・脚本 最初、小学生(5年生くらい?)の女の子のアップが何分間かつづく。「じゃんけんぽん」 掛け声がして、名前が呼ばれる。そしてまた、じゃんけんぽん。名前が呼ばれる。そしてまた… その間、女の子は目線を…

「書いた人」で、『マチビト』の石原まこちんさんをインタビューしたときのこと

石原まこちんさんを「書いた人」(「週刊朝日」2017年8/4号)で取材したときのこと 小学館の担当編集Nさんからインタビュー場所に提案してもらったのは、多摩川のお好み焼き店だった。仕事場か喫茶店とかホテルのラウンジが定番だが、夕方のお好み焼き店とい…

佐藤正午さんと「「家」の履歴書」

2017年7月19日、佐藤正午さんが直木賞を受賞された。 めでたい!! 家の中をひっくり返して、週刊文春の「「家」の履歴書」の切り抜きを読み返してみた。2002年12.12号だから、佐藤さんお会いしたのは15年前のこと。編集者と二人で佐世保にいったのをよく憶え…

葬儀屋さんのインタビューをはじめました。

ブログ・インタビュー新連載 「葬儀屋、はじめました。」をはじめました。 拙著『父の戒名をつけてみました』の続篇というか、ひょんなことから付き合いができた、町の葬儀屋さんのインタビュー連載をはじめました。ふつうだけど、変わっています。覗いても…

おぞけながらも読んでしまった『かわうそ堀怪談見習い』

目にしたくない。なのに読んでしまった。二度も。というのが『かわうそ堀怪談見習い』柴崎友香(角川書店)だ。 ワタシは幽霊よりも、虫が苦手。だからどんなに田舎暮らしに憧れがあっても、できっこない。理科の教科書は、載っている蜈蚣や蜘蛛の類のせいで…

「はじまりへの旅」に、『夜の谷を行く』を重ねてみた。

hajimari-tabi.jp 時間があいたので、マット・ロス監督の「はじまりへの旅」という映画を観た。予備知識なしだったけど、すんごく濃い映画だった。 アメリカ北西部の森深くに暮らす、子沢山の一家の物語で、父親のベン(ヴィゴ・モーテンセン)は、1960年代…

藤田宜永『大雪物語』と、“24時間365日電話受付中”の葬儀屋さん

藤田宜永の『大雪物語』は、記録的な降雪で交通が遮断。「陸の孤島」となったK町を舞台にした全6話のオムニバス短編集。雪に閉ざされたリゾート地というと、ジャック・ニコルソン主演の「シャイニング」が思い浮かぶが、こちらは閉ざされた狂気でなく非常…

『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生を読む

お蔵入りした書評 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 大崎善生(角川書店) 著者は『聖の青春』などで知られる小説家で、07年に起きた拉致強盗殺人事件のノンフィクションだ。 犯人たちと被害者には何の接点もなく、男たちは「闇の職業安定所」と呼ばれる…

今年読んだ「弔い」の本、8冊

2016、今年読んだ本の中で、「弔い」をテーマにしていて印象に残った、8冊。 『煙が目にしみる 火葬場が教えてくれたこと』ケイトリン・ドーティ 池田真紀子・訳(国書刊行会) 葬儀会社に就職し「火葬炉」の担当になった若い女性の職場体験記。米国は土葬だ…

津村記久子『浮遊霊ブラジル』の中に出てくる、「オモ族」の写真集を見る男の子の話が面白い。

一日のご褒美に「オモ族」の写真集を見る男の子の話が面白い。 津村記久子『浮遊霊ブラジル』(文藝春秋)津村記久子の書く小説といえば職場小説の印象があるのが、最新刊の『浮遊霊ブラジル』は、死んじゃったお爺さんが、生前に行きたかった海外旅行を幽霊に…

映画「淵に立つ」(深田晃司監督)のあるキャラクターについて考えてみた

映画「淵に立つ」(深田晃司監督)を観て… 映画『淵に立つ』公式サイト ※映画のネタバレを含んでいます 日が経つにつれ、観終わった直後の違和感はだんだんと薄れ、浅野忠信演じるあの男は、観た人たちのコメントにあるように「得体の知れないモンスター」だっ…

若い女性が、火葬場で働いた体験記『煙が目にしみる』が面白い。

「食人族」というと何とも恐ろしい。私たちとは異なる世界に生きている蛮族と考えがちだし、この本を読むまではそうだった。60年生きてきて、知ってはじめて視界がひらけたというと少々大げさだけど、いまはそんな感じだ。『煙が目にしみる 火葬場が教えてく…

売られていったアカと、名もないウチのアンドロイドたちのハナシ

最近読んだ本で、印象に濃いのは、写真家の鬼海弘雄さんの『靴底の減りかた』(筑摩書房)という随想集に、バングラデシュの村で目にした光景を綴った一文だ。 朝、露店の男がひとりでやっている肉屋の前を通り過ぎようとすると、向こうから山羊を引いた親子が…

特別ではない一家だけど、「五島のトラさん」は、

www.ktn.co.jp 『五島のトラさん』は、長崎県、五島列島の島で暮らす一家九人のドキュメンタリーだ。 主人公のトラさんは、「トラヤ」という五島うどんの製麺所を営む犬塚虎夫さん。ひとつ年下の妻、長男・拓郎、長女・こころ、はなえ、さくら、竜之助、末っ…

『伯爵夫人』の著者インタビューをして思ったこと。

「週刊現代」誌の取材で、『伯爵夫人』(新潮社)で三島由紀夫賞を受賞した蓮實重彦さんを取材したのは、ひと月ほど前のこと。取材は編集者からの、問い合わせの電話があったとき、作品は未読だったが受賞の記者会見が話題になっていたのは知っていた。 「答え…

付き人だったひとが語る、ドキュメンタリー映画「健さん」

respect-film.co.jp 『健さん』(日比遊一監督)というドキュメンタリーがこの夏ロードショー公開される。 俳優・高倉健について、マイケル・ダグラス、マーティン・スコセッシ、山田洋次、降旗康男といった映画監督や俳優をはじめ、20人以上の人たちが語る声…

独身女が年収250万円で家を買うのは…池辺葵の『プリンセスメゾン』から

写真家のHさんから、家賃がいくらというのは外してくださいと言われ、まあ、そうかと思ってゲラから削った。 けっこういい暮らしをしているじゃないか。そう見られかねない。実際は、大黒柱である妻が体調を崩し、毎月の家賃の算段に頭を悩ましている。いつ…

『三の隣は五号室』に残された3センチのゴムホースのこととか

ぶーん、ぶーん 我慢できずエアコンのスイッチを入れたら、壁に据え付けられている室内機が身震いしているではないか。リモコンを操作し、静穏モードにするとさらに振動はひどくなる。 バタバタバタ ヘリコプターが旋回しているような音で、翌日、大家さんに…

「205号室」の六原豊子さんが残していった雑巾のこととか

長嶋有の『三の隣は五号室』(中央公論新社)は、築50年の木造モルタルの二階建てアパートに居住した13組の住人たちの物語。のようで、じつは、彼らの暮らしを観つづけたアパートそのものが主人公のように思えてしまう長編小説だ。 1966年から、2016年まで。…

 背中を演じる人たちの漫画『UNDERGROUN‘DOGS アンダーグラウン・ドッグス』(黒丸)

【わにわに ウラカタ本】『UNDERGROUN‘DOGS アンダーグラウン・ドッグス』黒丸(小学館ビッグコミックス) スタントマンといえば、危険なシーンの代役をする。高いところから飛び降りるとか、クルマに撥ねあげられるとか。この前までワタシもそういう場面を…

真っ二つに破損した眼鏡のフレームはボンドでくっつくか?

寝ぼけて、眼鏡を踏んづけ、パキンと真っ二つに。 あーーーーーー、 もちろん落ち込みました。 ☝何度も、くっっけてみたものの、もちろん元に戻るわけもなく、 ひどい近視で、眼鏡がないと生活できないため、万一のときの眼鏡をつくっていたのでなんとかしの…

インタビューライター・朝山実 近著 『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社) 『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店) 『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP社)etc. 不定期連載 「日刊チェンマイ新聞」"朝山実の、という本の話" http://www.norththai.jp/