わにわに

朝山実が、読んだ本のことなど

ノイズ

真っ二つに破損した眼鏡のフレームはボンドでくっつくか?

寝ぼけて、眼鏡を踏んづけ、パキンと真っ二つに。 あーーーーーー、 もちろん落ち込みました。 ☝何度も、くっっけてみたものの、もちろん元に戻るわけもなく、 ひどい近視で、眼鏡がないと生活できないため、万一のときの眼鏡をつくっていたのでなんとかしの…

漱石と床屋。

前話『東海道中床屋ざめき』からの、床屋つながり 夏目漱石の『草枕』に、山間の村の理髪店に、旅の男がふらりと入るくだりがある。床屋「髪結床」と表してある。 話し好きな親方で、どこからやって来たのかと訊かれ、東京だというと、「私(わっち)も江戸…

指先の感触

全盲で耳も聴こえない妻と、五十をこえてから結婚した夫のふたりが、田舎の村で静かに生活するドキュメンタリーを深夜にやっていた。何度か再放送していたらしい。 妻が視力を失ったのは、四十代で、聴覚は幼いころだという。 ふたりの会話は、夫が妻の手の…

30は迷うよね。女性スーツアクターだった人見早苗さんのインタビュー。

30になろうとするときは、どうしていたのか。 20のときはよく覚えていて、失敗ばかりしていて、もう思い出したくもないんだけど。 勤めていた書店をやめて、ぜんぜんちがう業種に転職しようとしたけど、間際になって「あ、おれ、電話するの苦手だな」(何を…

「おいで この心に」と辻内智貴が呼びかける。

『僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ』という辻内智貴さんの文庫の解説を書かせてもらったときから、彼のCD「ZeRo」をよく聴いている。気分がローなときには、すこし元気になれる。 ちゃんと歌詞が聴き取れるということでは、昭和歌謡っぽいとい…

“透明人間”に徹してきた古賀さん、“牛の仕事”を経験した佐川さん

佐川光晴『主夫になろうよ!』(左右社)を読みながら、東京大学教養学部×博報堂ブランドデザイン『「個性」はこの世界に本当に必要なものなのか』(アスキー新書)を、パラパラめくってみた。 雑誌の企画で、作家の佐川光晴さんと、小学校の先生をしている鈴木…

#佐藤正午史上最強の小説!!

いろいろあって、ものを書く気力がわいてこなかったし、ひと月ほど本もほとんど手にしなかった。ようやく年明けからちびちび頁をめくっていたのは佐藤正午の『鳩の撃退法』(小学館)。上下本で、最初はささいなことをあれこれ書いていて、ちょっと村上春樹っ…

深夜の再読。

いまは時代劇作家になっている志水辰夫さんの現代小説に「いまひとたびの」という短編がある。表題作の単行本が出たのはずいぶん昔のことで、直木賞候補にもなった。短編集だと受賞は難しいといわれていた時代で、惜しいことに賞を取り逃がした。 志水さんが…

三叉路。

木戸幹夫さん(元代官山・文鳥堂書店)から、以前に書いたものに下記のコメントをいただきました。長文なので、ここに転載します。 お久しぶりです。お元気そうで何よりです。 思い出していただき書いていただきありがとうございます。嬉しいです。 こちらも図…

駅から徒歩1分の場所にたどり着かない恐怖。

このごろ目的地にたどり着くのが難しくなかった。きのうも「駅を出てすぐ」の場所に20分もかかってしまった。帰りは駅まで1分とかからなかった。 転記した地図どおりに駅を出て右に進んだ。スススッと。しかし、これが間違いだったらしい。ライブをやってい…

おうどん。

「浅漬けのきゅうりに、鰹節をまぶして、お醤油をつけたのがおいしかったわぁ」 ベッドに横向きになった次姉が、子供ころにお米屋さんの友達に家で食べたものをもう一回食べてみたいという。 姉の髪はまばらで雪のように白くなっていた。 見舞いといっても、…

檀家や「ハカジチ」て?

『お寺の収支報告書』橋本英樹著(祥伝社新書) コドモのころ、ダンカという言葉を村のひとが大勢集まるたびに耳にしました。「お坊さん」「ぼんさん」「あのボウズ」といった言葉と組み合わさるものの、それが何を意味するのか、長いあいだよくわからぬままで…

町内会ノイローゼ 「ムカデ競走」に出る人がいないと、誰が困るのか?

『“町内会”は義務ですか? コミュニティーと自由の実践』紙屋高雪著、小学館新書から、 選挙の投票率が半分に満たないどころか、有権者の三分の一あたりの低調時代に「町内会(自治会)」は、重荷ではないでしょうか。 本書は、なり手のない団地の自治会長を、…

あの「恐怖のミイラ」の主人公は、じつは、なにも考えてない刑事たちだった?!

「恐怖のミイラ」を警官隊が包囲する一場面です。 観ていて、素朴な疑問を抱きました。 半世紀ぶりに見直すと、ここまで追い詰めながら、なぜか取り逃がしてしまう。もっともらしく登場する「辣腕刑事」たちが、失策、失態を重ねる。唖然の展開のドラマです…

レトロ感にハマる、「恐怖のミイラ」のつづく。

今年のマイベスト・サスペンスになりそうなのが、『後妻業』黒川博行著(文藝春秋)。関西弁の笑いとともに、じわじわっと怖さがまします。 「ごさいぎょう」と読む。作者の造語なのでしょうが、妻に先立たれた資産家の家に入り込み、遺産を騙し取る話。警察が…

割引クーポンをだす妖怪ヒーローと、トイレに行けなかった「恐怖のミイラ」のこと

水木しげるが、鬼太郎をはじめとする妖怪漫画を描きはじめたころからすると、ずいぶん世の中も変わったものだと思ったのは、宮川さとしの『東京百鬼夜行①』(新潮社)を読んでのこと。 シリアスタッチの『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(新…

2376分の1 ノリさんを探せ 横浜ベイスターズの最終戦、ただし二軍。

きのうは横浜ベイスターズのファームの最終戦(対ロッテ)を観に遠出しました。 京急線の「追浜」(金沢八景のもうひとつ先の駅で、おっぱま、と読む)から徒歩で15分くらいの球場に着いて、びっくり。以前、平塚の球場にいったときを上回る、スタンドには立ち見…

横浜ベイスターズの二軍の試合を見続けているひとのブログが面白い。

中村ノリ選手の去就が気になります。 そんなのにノリのこと好きだったっけ? と不思議がられたりしますが、たしかに、にわかです。 中畑監督の逆鱗にふれ、春に二軍に落とされて以来、今年は一軍出場のないまま、二軍のホームでの試合に4番スタメンで起用され…

「人間ピラミッド」て、よさこいソーラン、それとも岸和田ダンジリみたいなものというか、

人間ピラミッド、て、わかります? 人がどんどん積み上がって、山になる。三角の。馬の上に馬が。 客観的に見ると、何だろう。宇宙人からしたら、 「この星の人間はよくわからない」。そう言われそうな。 11段の記録に挑戦して骨折した生徒が四人も出たとい…

ペットボトルの数が多すぎると思ったけど、

きのう、テレビ東京のヒット企画、路線バスの旅をやっていた。蛭子能収さんと太川陽介さん、それに今回はゲストに野村真実さんを加えて三人で、路線バスを乗り継いで、静岡県の御殿場から新潟県の直江津を目指すというもの。 順調に見えて、どんなアクシデン…

死刑囚となった小林さんは、その後何を考えて10年を生きたのか…

デング熱が話題になっていますが、タイの友人からのメールで、むこうでは風邪みたいにかかる病気で、「死なないの?」と訊くと、「死んだりしませんよ」て。 どうも、しばらく寝ていればすむそうで、いわく「そんなに危険なものならば、日本政府は渡航制限を…

「お葬式」をもっと安くならんかと賢く値切るということについて、

これは知り合いの葬儀屋さんから聞いた話。どっと疲れた。 シマさんは、30万円以下の家族葬を中心にしている小さな会社に勤めている。どんどん価格を下げるように喪主さんに言われ、「もう町の葬儀屋さんはなくなっていきますよ」と暗い声をだしていた。駅前…

はにほさん、て誰よ?

じつはペンギン好きです、ワタシ。 それもシャキッとしているのよりも、へたれなのが。 ペンギンは習性として群れをなして生きている動物たちで、とはいえ集団生活をとりながらもつがいが基本で、子供にしても自分んちの子だけ大事にして、よその子が間違っ…

空気について。もしくは、蝉スナックとかさ…

きょう発売の「週刊現代」の書評頁「人生最高の10冊」で、山崎ナオコーラさんの記事を担当しました。 タイトルが仰々しくて、取材のお願いをするときに、いつもためらいます。そんなたいそうなものは、と断られたりもしましたし。 「作家になってからの友…

小松さんのカラゲンキ

AERA 2003年 6/2号 がん克服の講演会で。撮影は郭充さん 笑福亭小松さんについて③ 小松さんの検索をしていると、落語家仲間の桂文福さんのブログを見つけた。小松さんが「笑福亭」を名乗れなくなって以降の付き合いが書かれてある。 安堵した。鶴瓶さん…

小松さんの長電話

あの日の笑福亭小松さん② 取材中、何度も電話をかけてくるひとだった。「どうしておられますか? と思って」 愛嬌のある声だった。なれなれしい口はならない。それなのに、ぐっと身を寄せてくる。 「AERA」の「現代の肖像」の取材は半年くらいときには一年近…

山頭火みたいに生きたかった小松さんのこと…。

あの日の笑福亭小松さん 「調子のいいときは取材だなんだとぎょうさん人が集まってくるけれど、つまづくとあっという間に寄りつかなくなりますわ」 小松さんのぼやきだ。マスコミの一端の仕事をしているとよく耳にすることである。メディアの仕事は「シュン…

鴻上さんの一石。なんで、言われたとおりにしか…、

綿花は、ひとによってはこの絵のように見えるらしい。 かわいくもあり、意味深。 きょう発売の「週刊朝日」で、『羊の木』 全5巻(作画いがらしみきお、原作山上たつひこ)講談社イブニングコミック、の書評を書きました。 小説や映画では表現しにくい、犯罪者…

借金を頼むのはツラいが、断わるのも…

むかし代官山に書店を開いた、木戸幹夫さんのこと。 【わにわに書庫】 『別冊本の雑誌⑰本屋の雑誌』(本の雑誌編集部編・本の雑誌社)から、 東横線「代官山」駅すぐの「文鳥堂書店page1」の木戸幹夫さんのお家に一度だけ泊めてもらったことがある。まだ…

「母に欲す」を観て、若くしてといっても50代だけど妻に先立たれた父さんもツラいんだ、とおもう。だもので、後妻探しするんだろうな。

もうやめよかな、と思っていたら、 「いいねえ、ワニワニ」と、電話をいただいた。写真家の鬼海さん。どこで、どうたどり着いたか聞かなかったが、深夜にすごいアクセスが記録されていたのは、そのためらしい。「面白いねえ」といわれたのは初めてで、反応に…

インタビューライター・朝山実 近著 『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社) 『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店) 『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP社)etc. 不定期連載 「日刊チェンマイ新聞」"朝山実の、という本の話" http://www.norththai.jp/