ファミチキのうらみ、デリこぶたのよろこび
「いらっしゃいまし。」とこんな夫婦が現れたら……
『コンビニの清水』津村マミ著(小学館ビッグコミックス)から、
コンビニを舞台にしたシリーズものの連作マンガだ。背格好も顔つきもそっくりな老夫婦が切り盛りしている、24時間営業の店というのが設定だ。ほんとうにそんな店があったら老人虐待だろうが、昔ながらのプラモデル店をコンビニにしたようなものか。
ところで、うちの駅スグに2店、さらに徒歩3分くらいに3つ。けっこうコンビニ激戦区にいる。
ファミチキやスパイシーチキンを買いにいちばん利用していた駅隣接のファミマから足が遠のいたのは、やはりチキンを買いにいったときのこと。ついでにほかのものを買い足して、家に戻って袋をあけたところ、肝心のチキンが見当たらない。レシートを見ると、ちゃんと記載がある。そうか、あのアンチャン、ほかの店員さんに呼ばれてなんかしていて、入れ忘れたらしい。「袋を別にしますか」と言っていたのを思い出した。金額にしたら百円ちょっとのハナシだ。もどって言いに行こうか。でも、なぁ……。
で、結局、食べられないとなるとむしょうに食べたくなるもので、別のファミマに買いに出かけた。時間が経っているからか、アジがいまいちで、それからもう半年くらいファミマのチキンは食べていない。間違いというのは誰にもあることだから、言えばいいだけのこと。だけど、もやもやしてしまって、結局そのファミマもごくたまにしかいなかない。代わりに利用するようになったのは、セブンで、ここはオーナーなのだろうか、ハキハキとしたおじさんが店頭に立っていることが多い。チキンは買わなくなったかわりに、コロッケを買うようになった。ただ、それだけ。コンビニというので、思い浮かんだことで、コレが言いたいという主張があるわけでもないが、トモダチにそのハナシをしたらも呆れられた。いかにもコモノなワタシらしいというのだ。
さて、マンガに話を移すと、くだんの夫婦、小さすぎてレジに立つときは、踏み台に乗る。背後の電子レンジを使うのも同様。夫婦は清水といい、だから「清水のコンビニ」というわけだ。
『深夜食堂』のコンビニ版というか、人生に疲れたふうなお客さんが、店の明かりに誘われて入ってくると……というお話。第2話「他人のふり見た」がけっこう好きだ。
夜、帰宅途中なのだろう、後輩の尻拭いにイライラッとし「偏頭痛の薬ありますか?」とOLなアラサーちゃんが入ってくる。
レジ越しに、揃って夫婦がニュッと顔を出す。いつも一緒に行動する。いまもラブラブなんだそうだ。
そして、ギョッとするくらいの鬼顔で「ありません!!」と返事する。鬼は、「どうです、あなたの顔マネ」どっちが似ているか、と訊ねる。意味がわからず、とまどうアラサーちゃん。
「それよりは」と夫婦は店から大根をもってきてズバッと切り、ささっと下ろす。手際がいい。「だまされたと思って食べてみんしゃない」という。
客の立場からすれば、失礼といえば失礼なのだが、ふーん、大根おろしって、頭痛に効くのか、試してみようとワタシは思ったわけだ。
というか、自分では気づかないけど、見ず知らずの相手に「あなたの眉、いまめっちゃこんなふうに釣りあがっていますよ」というひとはいない。とくにコンビニの店員には。
が、わざわざそういうことをしてみせる。怖いものなし、というか、押し付けがましくお節介なのが「コンビニの清水」の老夫婦という設定で、各話が展開していく。
一話完結スタイルで、なじみ客というのは登場せず、客との関係も、そういうことかあったからといって特段深くはならない。準レギュラーとなるバイトの女子がいて、いいトリオ感を出しているものの、基本は夫婦が主人公。
老夫婦で24時間営業、年中無休というのは、無理むりな設定だが、続いているのは、夫婦は食うためというよりも余生を楽しんでいるふう。ふたりとも「嫌なことはしない、ひとのためより自分のため」がモットー。反骨でもあり、チャリを二人乗りしていて、しつこく注意する若い警官に「デートの邪魔じゃ」と、「ばーさん」がガンを飛ばす。コミカルな上に、かなり毒気があって、いい。
話題は逸れるが、先日、エースコックのワンタンメンをネットで注文した。出身が関西だからか、たまにものすごく食べたくなるのだ。具のないタンメンが入っているだけのシンプルな即席めん。横浜にいたときは、近くのダイエーに置いてあったからなんとも思わなかったが、引越してから探しても見つけることができず、ないとよけいに欲しくなるものでエースコックのホームページを見つけた。
「デリこぶたの日」というのがあって、その日に注文すると10食に、オマケとして5食+こぶたグッズがもらえる。送料込みで1512円。一食100円ってわけで、スーパーとかで買うのと比べるとやや高めだが、チョイうれしい。それに、支払うように送られた最初のメールの金額に、割引の金額が抜けていたので、あとから送った訂正ぶん、百円ほど安いほうで払い込んでくださいね、とお詫びの電話がかかってきた。たったそれだけのことだが、「こぶた」のファンになりそうだ。好きになったり、そうでなくなったりするのは、こんなふうにささいというか、ワレながら単純なものだなぁと思う(笑)。
タイのサイト「という本の話」を更新しました。
ネタは、中島義道著『異文化夫婦』(角川文庫)。憎み合いながらも別れられない夫婦のはなしで、口をすぼめたイッセー尾形が大学教授役で、脳内を動き回っていました。