ラジオから中島みゆきの歌が流れ、岩岡ヒサエのこのマンガにあっていた。
【わにわに書庫】
岩岡ヒサエさんは、名前がうちの母親といっしょで、母を思い出し親近感がわく。マンガは『土星マンション』あたりから読み始めたけど、この『孤食ロボット』はとくに、いい。
ちょっと前になるが、学生が学校のトイレで弁当を食べるという話があった。ひとりで食事をするのをひとに見られたくないというのだ。その気持ちわかるなぁというのと、イイトシをしてしまったいまではそこまでしなくてもとも思う。
このハナシは、そういう時代の風をうけてとめたものかもしれない。
ある日、行き着けのメシ屋(居酒屋?)のポイントを貯めるとプレゼントが送られてくる。小人サイズのロボット(本人はいちいちアンドロイドと訂正する)で、単身者の食事が偏らないか管理してくれるというもの。
どれも同じに見えるけど個体差があり、性格も違っていて、おずおずと遠慮深いのや口うるさい小姑のようなのといろいろ。一話完結の連作で、マッチングはテキトーに見えて、利用者の性格と彼らが合致するように考えられているらしいとわかる。ていうか、作者がそう考えてつくっている。
と言うのも、気にいらなければ「返品」してくださいと説明され、ジャマっけに思って、一度は返品してやろかとするんだけど、結局一週間のお試し期間を過ぎても、大半の利用者が傍に置くようになる。
利用料はタダ。チャージも行きつけのお店で無料でしてくれる(ビジネス目線でいうと、よく考え抜かれた常連さんの囲い込み策というわけだ)。
彼ら(自分をボクという)は身体が小さいものだからレシピのアドバイスをしてくれるけれど、作ってはくれない。一緒に食卓に着いてくれるけど、食べるわけではない。外食産業チェーンのサービスの一環なので、外食は自分の店に連れていく。自主的に自炊のための食材をチェーンに発注もする。そもそもが店のまわしもの、利用者から不審の目で見られ、モジモジしたりもする。ロボットなのにね。
言われたことに凹んだり、ムキになったり。感情らしきものがあるらしく、そういう態度がなんかワカイイ。
身体のサイズといい、自己主張したりするあたり昔飼っていたハムスターに似ている。ちょこんと膝をまげ、正座してニコッとした絵とか。思い出すと、ああーー、また飼いたくなる。
利用者は「孤食者」限定。転勤とかで家族と離れて生活しているひとも含まれるが、家族と生活するようになると返さないといけない。そのときロボットたちの記憶は消去される。このマンガが惹きつけるのは、いくつもの「お別れ」の場面だ。
「お別れですね」と元気イッパイ口にする彼らがねぇ。泣けるわ。最初はみんな怪しいなぁという目で見られ、「お前なんか返品だ!」と怒鳴られたりしながら、だんだんとなじみだし……。なんだか、これってユージョーとかコイビト関係によく似ている。
別れた奥さんの手料理を思い出すのもいいが、グッとくるいちばんは、ちょっとした行き違いから友達みたいになった利用者から突然、返品を言い渡される。ルンルンだった彼が静止する。ピタッと。
何事もなかったかのようにその後はふるまうのだけど…。感情があるのだ。塩豚の作り方を教えてくれる話で、今度試しに、とかおもう。
あと、かれらには、アンドロイドというだけで、利用者たちもとくに名前をつけない。作者の意図だとおもうけど、返品が記憶のリセットとあわさって、そのへんもいい。