わにわに

朝山実が、読んだ本のことなど

嗚呼、眉山級の傑作!!

 

中尉

古処誠二さんの『中尉』(角川書店)を読み終わる。

語り部の軍曹がビルマの戦地で生活を共にし、その間、目にするたび見下げ、不快以外のなにものでもなかった軍医に対する悪感情が、残りの紙幅が乏しくなるにつれ、オセロのように反転していく。

読後の深みは、太宰治の「眉山」に通じる。

太宰の短編を例に、自身が考えるハードボイルドはどういうものか、と教えていただいたのは、亡くなられた藤原伊織さんで、語り部によって語られる、見下げられる軍医=“影の主人公”がいっさい内心を明かさないというスジダテも「眉山」。感動を語りたいが、語るのがむずかしい。それも「眉山」だ。

 

 

 追記  👇に古処誠二『中尉』についてコラムを書きました。


ちょっと言いタイ - 日刊チェンマイ新聞

中尉

中尉

 

  

インタビューライター・朝山実 近著 『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社) 『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店) 『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP社)etc. 不定期連載 「日刊チェンマイ新聞」"朝山実の、という本の話" http://www.norththai.jp/