古処誠二さんの『中尉』(角川書店)を読み終わる。
語り部の軍曹がビルマの戦地で生活を共にし、その間、目にするたび見下げ、不快以外のなにものでもなかった軍医に対する悪感情が、残りの紙幅が乏しくなるにつれ、オセロのように反転していく。
読後の深みは、太宰治の「眉山」に通じる。
太宰の短編を例に、自身が考えるハードボイルドはどういうものか、と教えていただいたのは、亡くなられた藤原伊織さんで、語り部によって語られる、見下げられる軍医=“影の主人公”がいっさい内心を明かさないというスジダテも「眉山」。感動を語りたいが、語るのがむずかしい。それも「眉山」だ。
追記 👇に古処誠二『中尉』についてコラムを書きました。
ちょっと言いタイ - 日刊チェンマイ新聞