2017のミステリーの収穫5冊
週刊文春12/14号がポストに入っていた。
2017ミステリーベスト10が発表になっている。
わたしも国内部門だけアンケートに答えたけど、圏外の20位以内に三冊入っていたものの、10位以内には一冊もなく、何をナゾとして面白がるかの小説を愉しむポイントが違ってきているんだろうな。コメントも書いたけどムダになったので、ここに載せておきます。そうそう、『暴れん坊本屋さん』の久世番子さんのカットが面白かった。
1位
『月の満ち欠け』佐藤正午
信じがたい「真相」を信じ込たくなるのは、こまやかな生活描写の積み上げの功だろう。長い長い物語の牽引力は、冒頭の東京駅のカフェでの三人の何気ない会話のわずかな違和感。そこに作者の力技を感じる。
2位
『沈黙法廷』佐々木譲
県を隔て捜査班が競い合い、容疑者を絞り込む過程がリアルで、数多の「冤罪事件」の実況を読むようで鳥肌がたつ。一方、読者の心を掴んで離さないのは、不利を承知で被告が無実の手がかりを秘匿する。その理由を問うてゆく重厚なヒューマン・ミステリー。
3位
『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良
異国で死刑を求める「殺人鬼」の少年時代へと遡る。「ぼく」と「わたし」、二視点の語りは「スタンド・バイ・ミー」のように甘酸っぽく、なぜ彼がと考えるほどに狂おしくてならない。作者ならではのクライムノベルだ。
4位
『いくさの底』古処誠二
起きてはならない、起こるはずのないことが起きてしまう。「戦場」は究極の密室!! 若い小隊長が山岳の駐屯地内で刺殺され、村民ばかりか自軍兵にまで疑惑の目が。一貫して戦争を主題してきた作者の心理ミステリー。
5位
『息子と狩猟に』服部文祥
死体を隠そうとする詐欺犯と、息子に猟を教えるために入山した父子。クライムミステリーと濃密な動物記、異種格闘技にも似た両者の合体が、未知なる知覚的興奮をつくりだす。