アリは、「死」をどのように捉えているかのかというハナシなど、
アリは死んだ仲間を運びだすそうだ。エッサホッサ。観察していると、遺体を墓地みたいなところに積み上げるのだとか。
彼らの「死んだ」かどうかの識別は、におい。まだピンピンしている働きアリに、そのにおいを塗りつけてみると、エッサホッサ、みんなで暴れるアリを抱えて運んでいくのだとか。
どうやらアリは「死」にともなう感情は有していないらしいと推論される。そんな冒頭から始まるのが、『死を悼む動物たち』(バーバラ・J・キング著、秋山勝=訳、草思社)で、まだ途中まで読んでいるところだけど、面白い。では「悼む」という独特の感情をもつのは人間だけなのか。
そんなことはないというのが本書で、「仲間の死」をかなしむ動物たちの具体的な姿が綴られている。
子供と動物と死を出せば、映画はヒットするといわれるくらい、ゾウもウサギもネコもツレアイがいなくなると傍を離れないどころか、おもわぬ行動をとる。人間のかなしみとまったく変わらない。それどころか、より深いものに見える。
ワタシは鯨肉が好物で、捕鯨に反対し極端な妨害行動を組織するひとたちのことはクレージーに思っているけど、「感情をもつ」ということでは鯨も哺乳類だし、頭もいいっていうものなぁ。こころが揺れる。でも、食べるだろう。
だから鯨を食べるのはいけないと決めてしまったら、この本に紹介されるウサギだってヤギだって牛だって、いけないはずだ。ウサギやヤギならいいという線引きの根拠がわからない。
おめえらピーターラビットを食うのかよお!
というハナシというか。べつにファンじゃないけど、鯨がかわいそうならウサギもかわいそうじゃない。
そういえばワタシは子供のころ、牛も豚も鶏もぜんぶ食べられなかった。口に入れると嘔吐してしまっていた。すごい偏食だった。
かろうじて食べることが肉系では鯨肉だけで「おさかなの一種」だと思い込んでいた。鯨というものがよくわかっていなかったのだ。
魚にも好き嫌いはあったけれど、いちおう食べることはできたのは、感情の有無に関係していたのかもしれない。
小学校の給食で、鶏の唐揚げが出たときのことをよく憶えている。
悪がきたちのリーダー格のタナカくんが「みんなが食べているのに、コイツひとりだけ食べないのはいけないんだ」と追いかけまわし、追い詰められて泣きながら口にいれた。その日、彼が悪さをしていたのを注意したことの報復だった。
口にいれたもの飲み込めずに吐き出すと、「うわっバッチィ」「ゲロゲロ」と取り巻きたちから囃し立てられた。
おかげで給食の際に「食べられないものは食べなくていい」と免除してもらえることになったし、イジメといっても当時はまあそれくらいのことで牧歌的なものだった。
いまでは昔が嘘みたいに、「皮」を焼き鳥屋で注文したりする。偏食が改善したのは大学に入ってからのこと。ひとり暮らしを始め、何でも食べないとやっていけなくなったからだ。
バイト先なんかでたまにごちそうしてもらったりしたとき「豚カツ定食二つね」といわれ、それダメとは言えない。口にいれるうち、うまいなぁと思うようになっていた。
そもそも偏食は、動物を食べるということに由来していたのかもしれない。気持ちの問題が大きかった。
きのう発売の「週刊朝日」の「書いたひと」に、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(新潮社)の宮川さとしさんのインタビュー記事が載りました。
お母さんが亡くなってからのこと、思い出したりしたことを綴ったエッセイマンガで、本のことは前にここで取り上げたので、省きます。お会いして印象に残ったのは、30代になって塾の講師から漫画家に転職したことですね。
そういえば、ワタシが東京へ出てきたのも30代半ばで、母が亡くなってしばらくしてからでしたから。母親って、磁力というか引き止める力があるというか。
宮川さんは、お母さんがガンになったときに、回復を願ってお百度参りをされたそうですが、うちの母親は息子がひとり暮らしを始めようとしたときに猛反対して、出ていってからも戻ってくるようにお百度を踏んでいたそうですから。げっ!?てハナシですけど、亡くなってずいぶんして父親から、「そういえば、お母ちゃんなぁ」と打ち明けられて、どう返事をしていいものか困惑したものです。
そんなうちのとは違って、宮川さんのお百度はポロポロ泣かせるエピソードなわけで、マンガにも出てくるパウチされたそのお百度の紙片の裏を見返すと、また泣きそうになりました。母だなあって。
宮川さんは、シリアスなものを描いていても、どこかコミカルだなあと思っていたら、もともとデビューするきっかけとなった最初のマンガが妖怪コメディで、先日そっちの『東京百鬼夜行』(新潮社)も発売になったばかり。百目のOLさんの話とか、「妖怪」なんだけど人間社会に溶け込んでいる。溶け込んではいるけど、「あいつ妖怪だよな」と距離をとって見られている。一昔前のガイジンさんに近いかもしれない。そういう感覚で見るというのは独特だなぁと思います。
スーパーのレシートにもらい泣きしてしまいました。 - わにわに
母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (BUNCH COMICS)
- 作者: 宮川さとし
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/08/09
- メディア: コミック
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